こんにちは。ミロの羅針盤館長のSenriです。
今日は、彫刻制作40年のキャリアを持つ僕から、中学校の美術の授業で「抽象彫刻」に挑戦している皆さんへ特別授業を贈りたいと思います。
この記事を読めば
抽象彫刻って何?
作品作りにどう向き合えばいいのか
アイデアを出すときに考えてみる3つの切り口
中学生が作る抽象彫刻の素材にはどんなものがある?
過去の芸術家の真似をしてもいいの?
輝く作品を作るには?
が納得してもらえると思います。
今回は中学生の皆さんと美術の先生に向けて書いてみました。
ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
Work by Senri いしトキとなわ
中学生が抽象彫刻に挑戦する前に知っておきたいこと
Abstract Photo By Senri
今からみんなで抽象彫刻を作っていくんだけど、
何を作るかということを考える前に、君たちが彫刻を作るということはそれ自体が素晴らしい創造行為をしていることを知ってもらいたいんだ。
君たちが材料に向かって無心に手を動かしているとき、君たちに起こっていることは君たちが想像している以上のものなんです。
美術という分野の学びは創造性に関するもの、それは人間にとって根幹をなす大事なものです。
この記事では、具体的な3つのアプローチと、使える素材やテーマも全て紹介しますが、まずはその土台となる『表現の本質』からお話しします。
だから、この記事では皆さんの中に眠る、創造性を解き放つためのヒントになる言葉を選びました。
そしてそれらの言葉は、僕が40年間彫刻をやってきた経験から得た、気づきや学びがもとになっています。
作品作りは、出来上がりの良しあしはあまり問題ではなく、個性と創造性に関する学びがあるかどうかということが大切です。
もちろん君たちの創造性が解放されれば、素晴らしい作品がきっと出来るよ。
しかしそれはあまり急がなくてもいい問題なのです。
ですからこの記事の中にも急いで答えを見つけようとせず、耳を澄ますような気持ちで付き合ってみてください。
とはいえ、実践のきっかけになるような材料や考え方は提供していきますから安心してくださいね。
中学生のための抽象彫刻の向き合い方 表現に関するちょっと長い話
Teaching at University
正解のない自由?
「抽象彫刻って何を作ればいいか分からない」
と、材料を前に手が止まっていないですか?
「正解はないよ」、なんて言われたことはありませんか?
確かに、抽象彫刻には「自由」であるということと「自分で決める」という側面が同時に存在しています。
だから、「逆に難しいな」ってなるのはとてもよく分かります。
ところで
自由ってちょっと怖くないですか?
真っ白な粘土を前に何を作ったらいいの?
となりますよね。
表現ってなに?
さて、ここで皆さんにお伝えしたいことは、抽象彫刻は「表現行為」だということ。
そんなの当たり前でしょ? と思ったかな。
でもここで注意!
表現行為っていうと、「自分を表現」しようと思うものなんだけど、自分自身を表現しようとするとなかなか難しいと感じてしまうことがないかな。
でも君たちの中にはそのことが一番気になる人もいるかもしれないね。
だから一応ここで答えておくと、ズバリ自分とは表現されることを待っているもの、です。
でもそれは段階を追って表されていくものというかな。。
大きすぎて一遍には無理というか。。
今から話すこと、そしてこの講座を通じて話していくことは、そういう人にもヒントになることだよ。
今、自分が分らなくても
自分が何かを感じているかは分ります。
何が見えたかも分ります。
何にワクワクしたかもわかります。
そういう風に自分と、自分が感じていることをいったん分けて考えてみるとやりやすくなります。
分らないままでいい
え?
何を感じているか分らない?
そういう時には「出来るだけ注意して」ものごとを観察してみるんです。
(今作品作りの話をしているよ)
それが第一歩。
いろんなものにメチャクチャわくわくする!
という人はOK!
でも、うーん分らん、という人も何かを観察してみてほんの少しでも気になったところに注意を向けてみましょう。
これは気休めを言っているのではなく、気になることというのは微妙なものなんです。
そこに意識を向けることが大事。
ここでのポイントは「分らないままでいい」ということ。
大事なことは分かることではなくて、感じることなんです。
感じることの中にすべてがある
君に秘密を教えてあげるね。
誰でも世の中にある物事の中から自分に大切なものを感じているんだ。
そして大事なものはすべて、感じることの中にあるんだ。
そして作品にとって必要なこともすべて、感じることの中にある。
君がうっすら感じているものというのは、とてつもなくでかくて、深くて、素晴らしいものなんだよ。
わかる と 感じる の関係
そして、分るというのは、ちょっと難しい言い方になるけど、その感じたことにフレームを与えることなんだよ。
フレームというのは、言葉、形、音、といったもののこと。
もう少し例えて言うと、形のない水にコップという器を与えるようなものだよ。
人間が「わかる」ための媒体のこと。
感じたことを見えるようにするということです。
よく聞いてほしいことがある。
ちょっとこんがらがるかもしれないけど、
僕たちは、「表現することによって自分が感じていることをより分かるようになる」んだ。
これすごくないですか?
作品を作る意味について
つまり抽象彫刻の場合は作ることによって、何かががよくわかるようにになっていくということだよ。
そしてこの作業を続けていけば、改めて世界を見たときに、もっとたくさんのことをもっと深く感じれるようになるんだよ。
ここが大事なところです。
そうすると作ることがもっと楽しくなる。
どうかな?
これが抽象彫刻(ここまでくると具象彫刻でもいいけどね。)を作る意味だ。
ついでに言うとね。
このように感性が開いていくとね、
他の分野にも洞察が深まると思うんだよな。
得意や苦手、その人の特異性、ユニークさ、つまり個性というものによるけどね。
そういうことを明確にしていくと結局は自分はどんなことに興味があるのか、つまり自分はどんな人間なんだということもおぼろげながら分ってくる、と言っていいと思うんだ。
まあ興味というのは変わっていったりするけどね。
そう、自分を知る行為というのは人生をかけて、その時々に、自分のやりたいことを明確にし、その中で自分を表していくことなんだ。
そのためには何かに注意を向けて、そしてやってみるということが一番大切だね。
ちょっと遠回りしたね。
美術が苦手な人も得意な人も、感性を開く、自分を知る一歩、という意味でもぜひ抽象彫刻にチャレンジしてみてほしいね。
https://www.milocompass.com/abstract-idea
中学生のための抽象彫刻のアイデアの出し方 実践! 形を見つける3つのルート
さてここからは
実際に抽象彫刻を作るためのアプローチについていくつか話していくよ。
表現と言うものは勿論自由なものなんだけど、それぞれの分野において、長い時間をかけて確立されてきた大体の道しるべは存在するんだ。
それは過去の芸術家たちがたどった道でもあったんだよ。
ここではそのアプローチを、出来るだけかみ砕いて3点にまとめてみたので参考にしてください。
① 感情を形に翻訳する
まず美術表現における感情とは何かということについて話してみようか。
感情って聞くと、喜怒哀楽ということを思い浮かべるよね。
嬉しい、怒ってる、悲しい、気持ちいい、疑い、苦しい、
などだよね。
では君が好きな音楽を聴いた時にはどんなに感じるだろうか?
僕はクラッシックなんかを聞くと、心が広がり軽くなるような感じがする。
アフリカの音楽などを聴くと、心と体が自然とビートを刻むように踊りだしそうになる。
こういうのも感情と言っていいんだよ。
曲の種類によって受ける感じがそれぞれ違う。
それを一つ一つ違った感情だといってもいいよ。
次に、例えば旅行に行って今まで見たこともないような素晴らしい景色を見たとき、何かに心を動かされて感動する。
キャンプファイヤーの炎を一晩中見ているときに、心の中に浮かんでくる何か落ち着くような感じ。
これも感情だ。
今度は素晴らしい芸術作品を見て、心が無限に広がっていくような気持になったりしないかな。
これも感情。
このように見てくると、美術表現においてはこの感情を表すということがかなり大事なことと言うことが出来そうです。
この前置きをしたうえで、一つ一つテーマを見ていこう。
喜怒哀楽を形に翻訳する
「うれしい」「モヤモヤする」「静か」「この感じ好き」「とげとげしている。でもこれは今私が感じていること」「穏やかな感じ」「パワフルな感じ」「温かい感じ」……。今の自分の気分を形にしたらどうなるでしょう?
気分ってすでに言葉に置き換えられていたりするよね。
今までの流れで言えば、気分とは感じていることのことですね。
とげとげした気分
やわらかい気分
ふわふわした気分
重たい気分
軽やかな気分
今まで経験したことのない力強い気分
これを形に置き換えたらどうなるかということです。
これを難しい言葉で共感覚と言います。
言葉や形でその気分を、結構正確に表すことが出来るんだ。
逆を言うと、その言葉を聞いたり作品を見たらその気分を感じることが出来るということ。
ヒント:
尖っている?
丸い? 重そう? 軽そう?
尖っている形は何となく分かるよね。
柔らかいは?
重いって形にするとどんな形?
軽いって形にするとどんな形?
細かくアドバイスしてもいいんだけど、重い形、軽い形ってどんなものか外に出かけて探してみよう。
これかなって思ったものを大事にしてみることだよ。
それぞれ一般的な方法はあるんだけど、これはまた別の機会に紹介するようにしよう。
Senri‘sこぼれ話 尖っているとか、ネガティブナものってどうして表現したいの?
今の自分を表現することは、例えネガティブなものであっても、それを表すことによって、自分自身、あるいはそれを見る人の深いところで共感し、気持ちを軽くしてあげることもあるんです。
これをカタルシス作用(浄化)と言います。
みんながみんな同じように感じないかもしれない。
でも君と同じような思いを持っている人もいる。
芸術表現と言うものは誰か一人が共感してくれればそれでいいのです。
そしてそういう一人は必ず存在します。
怒りや悲しみが美しいものを作る?
もう一つ怒りや、悲しみといった、いわゆるネガテイブな感情を表現するということが意味することについて話しておきます。
例えば怒りを表現するときに、粘土に向かって、ただ怒りをぶつけたとしたら、粘土は形にならないような気がするね。
あっちこっち飛び散ってしまうかもしれない。(笑)
おそらく怒りを表現するときには、その怒りを外から見ている状態になっているはずだ。
だからこそ怒りの形を表現できとも言える。
怒りの形をうまく表現できる人は、自分の感情に飲み込まれない冷静さを持っているといえるのかもしれない。
実は本当に美しいものは、怒りや、悲しみから生まれてきたんです。
深い怒りや悲しみから最も深い感情が生まれたんだね。
古今東西の芸術作品や、それを作った人たちのことを知っていくとそのことがわかるよ。
まあるい形をした彫刻でさえ、その根底に怒りのエネルギーがある場合があるんだよ。
怒りや悲しみという感情が、人間の中の本当に素晴らしい、美しい、偉大な部分に気づかせてくれる時もあるということだと思うんだ。
もちろん喜びの気持ちからだって素晴らしい作品は生まれるよ。
こちらも世界中に無数にそんな作品がある。
感情って面白いよね。
自分自身のありのままの気持ちを表現してみよう。
② 本質(エッセンス)だけを取り出す
動物(ペット)や人体(自分の手など)、魚や鳥 雲 山 車 舟 飛行機
エッセンスを取り出す方法というのはとても奥深いアプローチなんだよね。
エッセンスとは、それを、それたらしめているもの。簡単に「それらしさ」と言ってもいいね。
例えば、犬と猫ではどこが違うんだろう。
両方とも4本足だし、ひげもあるし毛におおわれている。
生物学的な違いはともかくとして、僕たち人間がパッと見て感じる違いというものがあるよね。
それは「犬っぽい」とか「猫っぽい」とかしか言葉には表せないもの。
それを紙の上に線で表すとしたらどうなる?
粘土で表すとしたら?
ということ。
エッセンスを抽出するということは、、共通の要素は省いてみようか。。。
ここまで読んだ君には疑問が浮かんだかもしれない。
「わざわざそんなことしなくても猫は猫を、犬は犬を作ればいいじゃない?」と。
はい、とてもいい質問です。
ここで秘密を明かしましょう。
何かを描いたり、作ったりするときには、すでに何らかの抽象化、つまりいくつかのエッセンスを選択して作っているということです。
何かをスケッチしようと思って鉛筆が進まない人は、すべての要素を描こうとしてしまうとことが多いと言えるかもしれない。
そうなんですよーと、思った人もいるでしょう。
もしそうなら「積極的」にエッセンスを「感じ取って」それを形にすれば、ものすごく存在感のあるそれが犬なら犬らしい作品になる可能性があるということです。
鳥なら空を飛ぶ
魚は泳ぐ
飛行機も空を飛ぶ、でも鳥との違いは?
このポイントに関しては抽象彫刻の父と言われた彫刻家コンスタンチン・ブランクーシ先生とフランスの動物彫刻家フランソワ・ポンポン先生の作品を見てみようか。
1. コンスタンチン・ブランクーシ「空間の鳥」

(羽も、くちばしも、足もない。ただ、空に向かって伸びる金色の形)
Senriの眼: ブランクーシ先生は、鳥を彫ろうとしたのではありません。鳥が空に向かってシュッと飛び立つときの**「上昇するエネルギー」**そのものを形にしようとしました。 余計なものをすべて削ぎ落としたとき、そこには「飛ぶ」という純粋なエッセンスだけが、まばゆい光となって現れたのです。
2. フランソワ・ポンポンの動物彫刻(シロクマなど)

(モコモコした毛も、鋭い爪もない。でも、誰が見てもシロクマだと分かる丸み)
Senriの眼: ポンポン先生の動物たちは、思わず触れたくなるような、なめらかな面でできています。 細かい毛並みを描く代わりに、彼はその動物が持つ**「ボリューム感(存在感)」と「おだやかな空気」**を形にしました。本物以上に「シロクマらしい」と感じるのは、彼がシロクマの魂の形を選び抜いたからです。
③ 素材と「遊び」ながら「対話」しながら作る
簡単に言うと即興的な作り方のことです。
こういうのが得意な人もいるよね。
いろいろ考えなくていいと言うか。
直感を大事にする方法だね。
むしろ考えないようにして素材で遊ぶ。
これも立派な作品の作り方なんです。
この方法も無限の可能性に満ちていますよ。
ただこの方法も、ともすると材料の前で手をこまねいたり、なかなか展開が生まれずに面白みを感じられなかったりすることになりがちなので、ちょっとルールを設けるのもいいですね。
むしろこのルールの設定に仕方が無限に存在するので、そちらを探ると面白いです。
例えば
鋭角な線だけ使ってみよう
凹凸を意識しよう。
石の中に感じる形を追いかけてみよう
粘土に何かモノを押し付けて形を作ってみよう
流木と爪楊枝と色を3色だけ使ってみよう
石を彫るときつるつるのところと粗いところを残そう
スクラップに色を付けてみよう
といった感じですね。
それくらい大まかに決めておいたらいいでしょう。
その上で、素材(石や木や粘土あるいは枝やスクラップ)と向き合ったら、頭で考えず、まずは手を動かしてみるようにしたらいいです。
削った面を触ったりしながら、次の形を決める、といった具合。
この方法はどんどん魔法が起こる方法でもあります!
楽しんでやれたらいいですね。
抽象彫刻へのアプローチについてはこちらも参照してください。
抽象彫刻のアイデアの出し方 形を作る6つのアプローチ
https://www.milocompass.com/abstract-idea
中学生の抽象彫刻で使う素材についてSenri の提案
石粉粘土の手軽さ
粘土もいろいろありますが、ここで紹介するのは石粉粘土です。
僕もアトリエでよく大きな石の彫刻を作る前の模型作りに使う粘土です。
石粉粘土の大きな特徴は自由に造形した後、乾燥させてペーパーで仕上げることが出来ることです。
ペーパーで仕上げることによって石の彫刻のようなフォルムを表現することが出来ます。
乾燥後はアクリル絵の具などで色も付けることが出来ます。
私はいろんな構想を練るときに使っています。
僕は粘土で手遊びをするような感じで形を作っていくのが大好きです。
これを磨いた時にどうなるかな、などと想像しながら作ります。
焼成粘土の温かみ
もし学校に窯があるようでしたら、粘土を焼成して抽象彫刻を作ってみましょう。
粘土は握ったり付けたり手の跡が残る手びねりに魅力がありますが、あえてつるつるにして乾燥後にサンドペーパーで仕上げることもできます。
また何かを押し付けたりして形を作り出す工夫をしてみるのもいいでしょう。
注意点として、この方法は焼成の時に割れにくい形をある程度考える必要があります。
形が薄い作品はそのままでもいいのですが、卵形のような厚みのある形は、焼成の時に割れてしまう場合がありますので、半乾きの時に半分に切断し、内側の粘土を取り出して厚さを一定にします。
それが終わったらノロで接着し、表面を仕上げます。
爪楊枝で空気抜きの穴をあけておきます。
空気抜きを作っておかないと、窯の中で爆発します。
粘土の種類によっては結構厚くても割れないこともあるので、粘土のメーカーに聞いてみましょう。
出来上がりは焼き物の温かみが伝わってくる、独自の素材感が得られます。
作品を窯から出すときのドキドキが味わえますよね。
素焼きで仕上げてもいいし、釉薬をつけても面白いですね。
素焼きで仕上げる場合には、粘土の種類にもこだわってみましょう。
石膏の「直付け」と「型抜き」
石膏は水で溶いて、流し込んだりペーストとして使います。
硬化した後も石よりも柔らかく加工がしやすいうえに、耐久性もあります。
昔から彫刻家がブロンズの原型制作などにに使ってきた素材です。
そして作品として仕上げることもできます。
石膏による造形には大きく分けると2つの方法があります。それが直付けと型抜きです。
直付け
直付けは心棒などに直接石膏をつけていきながら形を作っていきます。
ある程度石膏が付いたら、ヤスリやサンドペーパーなどで削って形を整えます。
型抜き
型抜きは、最初に粘土で形を作ったものを石膏に抜き替える方法です。
出来上がった粘土の形の上から石膏を塗って外型を作ります。
外型から粘土をかき出した後外型の内側に離型剤を塗ります。
そして外型の中に液状の石膏を流し込む方法です。
この方法についてはまた別に詳しく解説し、ここににリンクを張り付ける予定です。
石を彫る 「山の石」から「海の石」へ
高麗石などのやわらかい石の彫り方についてはほかにも色々出ているようなので、ここでは少し違ったアプローチを紹介してみましょう。
山の石から海の石へ
もしもノミとハンマーを揃えることが出来るなら、私はぜひ皆さんの周りに落ちている石を彫ってみてほしいなと思います。
20~30cmくらいの石を探してみましょう。
一クラス20人くらいであれば、外に出て彫るのがいいですね。
いろいろな抽象的な形、卵型のものや雲のような簡単な形を彫ってみたらいいでしょう。
私がワークショップでやるのは「山の石から海の石へ」というものです。
川の上流にある石は角が立っていてゴツゴツしています。
しかし川に流されて海の近くにたどり着くころにはまあるい形になっています。
しかしよく見るとまん丸ではありません。
元のごつごつしていた時の「性格」は残したままです。
縦に長い石は縦に長いまま、平べったい石は平べったいままです。
ただ角が取れて穏やかな形になっています。
これをノミでやると、自然に美しい彫刻が出来上がります。
コツは石の角をとっていくだけです。
カーンカーンと石が砕ける音を聞きながら結構夢中になれます。
皆さんの地域の石がどれくらい硬いかにもよりますが、日本で一番多い安山岩系であれば、ホームセンターのコンクリート用のノミと800g位のハンマーで大丈夫です。
ベンチグラインダを一台用意しおいて、ノミ先をたまに研いであげるといいです。
彫っているときに石が転がらないように、台を作ります。
石が動かないように石を3点で支えるようにします。
ちなみにワークショップは2時間くらいですが、安山岩の塊を、大概丸く彫ってしまいましたよ。
出来るだけ石の彫り方は動画を上げますね。
アッサンブラージュ(寄せ集め彫刻) 素材で遊ぶ
流木と爪楊枝と色のワークショップ
素材で遊ぶ話もしましたので、私がやったワークショップの中で流木と爪楊枝で彫刻を作ったときのことを紹介しましょう。
用意したのは海から拾ってきた流木 爪楊枝 それからアクリル絵の具です。
それから爪楊枝の太さと同じ直径の穴があけられる電気ドリル。
色は爪楊枝にだけつけるようにしましょう。
いわばこれがルールですね。(覚えていますか?)
これだけで作品を作ります。
このゲームでどうやって楽しむか。
さあ、どうしましょう。
好きな流木を選んで。
爪楊枝はいくらでもあります。
穴もドリルで、どんどん空けられますよ。
たった一本爪楊枝を使たっていい。
材料を見ながら一本また一本と穴をあけて爪楊枝を刺していく。
斜めに刺したり、深く刺したり、尖ったほうを穴の中に隠したり出したり。
最初からイメージが浮かぶ人は一気に行ってください。
この作品制作のポイントはどんなストーリーが生まれるかあるいはどんな世界が生まれるか
ということになるかな。
いろいろ手を動かしているうちにつながってくるもの、何か閃いたもの。
小さく閃いたけど何かまだしっくりこないとか。
そういう風にして何らかの世界が生まれてくると思う。
それは「君の世界」というよりも「君の何かを表しているもの」かもしれないね。
中学生の抽象彫刻の他のテーマについて 自然系 音楽系
自然系 風 波 炎 を形に翻訳する
中学生の抽象彫刻のモチーフとしてよく取り上げられているようだけど、僕なりの考え方を伝えてみるね。
どうだろう、こういう大自然にあるものたちを形にしようなんて、とてもロマンがあることだと思わないかい?
まさに自然との対話だ。
心がどこまでも大きく広がっていくようだね。
前の章で感情の表現について話をしたけど、このようなテーマで作品を作るときも感情がとても大きな要素となる。
大自然をテーマで作品を作るときは、大自然の感情に身を任せることだ。
これは大感情と言ってもいいものだよ。
それは自然の摂理、法則といったものに耳を澄ますことでもある。
そのような姿勢で自然に向かう時、君の中にも大きな感情が生まれることだろう。
そのような感情を基に形を作っていくことが大事です。
それじゃ風ってどんな形?
その前に風っていろいろな風があるの知ってる?
日本で名前がついているのだけでも150位はあるそうだよ。
地域ごとに名前がついていたりするから、もうとんでもない種類の風がありそうだ。
北風 南風 川風 潮風 野風 つむじ風 そよ風 空っ風 恵風 野分(秋の台風)寒風(よろず屋みっつん サイトから)
日本人はこれだけ風に思いを寄せてきた国柄なんだね。
だからそれぞれの風によって持っている感情も違うよね。
やっぱりそれらの風を実際に体験したいものだ。
もしくはそういう記憶からイメージしてみよう。
直線のイメージ?
交差するイメージ?
渦巻くイメージ?
それと風は擬音語で表される時も多い。
強い風だとビュービュー。
もっと強い風だとゴーーーとか。
冷たい風はヒューヒュー。
何でここまで言ってるかというと、風というものをどれだけ感じるかということが大事だからです。
風というものを思い切り感じたら、ぱっと出てくるイメージを紙に描いてみよう。
イメージはすぐに出てこなくても急がないこと。急いだり焦ったりすると、どんどんイメージは出てこなくなります。大事なことは心を風に向けること。後はリラックスしよう。周りを見渡してもいいし、落書きのようにただ鉛筆を紙の上で動かすだけでもいい。
スケッチの中に何かヒントがあったら、それを基に何か立体で作ってみよう。
極端な話、それは誰かが見て風に見えなくてもいいんです。
自分が見ても風っぽくないなーと思ってもいいんです。
それはなぜかと言えば、自分の判断はそんなにあてにならない可能性があるし、第一彫刻は風そのものではないからだよ。
彫刻には彫刻の世界があります。
自分が、これは風だ、と決めればいいんですよ。
これを言うと先生には怒られるかな。
でもそれが本質です。
風に意識を向けて、風を感じ、自分の中に風が生まれて、何かを作ったらそこに風がないはずがないのです。
あまり頭で考えないことだよ。
波や炎もまあ理屈は同じ。
波って、僕もビーチによく波の音を聞きに行くんだけど、あの律動的なリズムには心が落ち着くよね。
音楽系 音とリズム
音やリズムを彫刻に表現するということも、よく授業で行われているようですね。
僕も美大で講師をしているときに、音楽に集中しながらドローイングをするという試みを学生の皆さんとやったことがあるよ。
すると普段あまり絵を描かない理論系の(美術館の学芸員を目指すタイプ)学生も驚くほど楽しく絵が描けたと言っていた。
音楽と美術はとても密接な関係にあるというのは事実です。
抽象彫刻ではないけど、抽象絵画の祖と言われるワリシー・カンデンスキーは音の要素を色に置き換えて作品を作っていたというよ。
近代彫刻の巨匠アントワーヌ・ブルーデルはものすごい音楽好きで、特にベートーベンが好きだった。自からピアノを弾いている彫刻まで作ったほどだ。
あの夢見がちな絵で有名なパウル・クレーも音楽が大好きで自らバイオリンなどの楽器も演奏していました。
音楽と美術の関係についても数多く発言している。
クレーの作品も音のリズムの律動を思わせるものがある。
でも最も大事なのは、音楽が表現しようとしている根本の美を感じることなんだよ。
実はその根本の美というのは美術も音楽も同じものなんだ。
表現が違うんだ。
そう、あのフレームやコップの話。
こういう言い方をすると身もふたもないかもしれないけど、特に音楽を表現しようとしたわけではなくても音楽的な要素を強く感じさせる抽象彫刻はたくさんあるんだよ。
僕自身も彫刻の技術がなかなか進歩しなくて悩んでいた時期に、聞いていたベートーベンの音楽にとても感動したことがあったんだ。それを契機に彫刻の壁が一つ乗り越えられた感覚があったのを覚えている。
音楽に感動できたから彫刻も進んだんだ。
だから音やリズムを彫刻で表現したかったら、まずは音楽をたくさん聴いてみよう。
そして、ここでも同じ。
自分の中に沸き上がってくる感情を感じてみよう。
音楽を聴きながらドローイング
ここで僕が大学生と一緒にやった、音楽を聴きながらドローイングをする実践を紹介します。
紙と鉛筆を用意して、先生は音楽をかけてあげます。
みんなは自由に線を走らせます。
その時に出たイメージを描いてもいいですし、音楽に合わせて衝動的に線を走らせるだけでもいい。
気持ちは楽にしてください。
これは先生へ
15分やったら休憩。何クールか同じ音楽を流してもいいです。ある程度やったら音楽を変えてみましょう。例えば、マーラーの荘重な調べから、モーツアルトの軽快なリズムの音楽であるとか、ジャズに変えてみたりだとか、といった具合です。
しかしこの授業のポイントは、音楽の違いでドローイングの質が変わってくることを試すという側面もあっていいのですが、それよりはむしろ音楽が持っている「質」さきほどから述べている流れで言えば、音楽の持つ「美を伴う大感情」が、どれだけ描く衝動を刺激するかということ、または繊細な筆先への意識が生まれるかといったこと、美への衝動が生まれるかということ、つまり人間の持つ共感覚の確認が主な目的となります。
そして出来上がったドローイングをよく眺めてみてください。
普段よりうまく描けた?
いや下手だなー。
でもそこに何か美しいものはないですか?
必ずあると思うよ。
今思いついたんだけど、
おんなじことを粘土でやっても面白いかもしれませんね。
どんどん思いついたことやってみて。
筆が進まない人は、ドローイングや粘土制作にルールを設けるのもいいかもね。
幾何学模様だけで描くとか、丸だけで描くとか、長くても短くてもいいけど直線だけで描くとかね。
そこは、ま、いろいろ思いついたことをやることです。
創造の授業だからね。
作業前の小さな準備
制作をうまく進めるために、ちょっとしたアドバイスをしましょう。
それは素材に向き合ったときに最初にやることだよ。
彫刻の制作は、材料と「一対一」で向き合う静かな時間です。
ゆっくり深呼吸してみよう
作業を開始する前に、目をつむって3回、深くゆっくり深呼吸をしてみてください。
心が静かになると、目に見えるものだけでなく、手の感触や材料の小さな「声」が聞こえるようになります。
この「静かな集中」が、作品の世界に入っていく第一歩です。
中学生の抽象彫刻 まとめ|心を込めて作ることが最大のコツ

今日は中学生の皆さんに、抽象彫刻の向き合い方やアイデアの出し方についてお話してきました。
皆さんが心から情熱をもって抽象彫刻に取り組めるようなヒントは何かな、ということを考えてお話ししたつもりです。
心から納得することが情熱の第一歩だからです。
かといって最初はなかなか簡単にはいかないかもしれませんね。
でもそういう「上手くいかなさ」が面白さの源でもあります。
最後に40年間彫刻を作ってきた私から、皆さんに作品作りのエッセンスについてお話しして終わりにしたいと思います。
それは
心を込めて作るということ。
この1点を大事にすることで不思議なことに、目に見えない「命」が作品に宿ります。
そうですね。
「こころを込める」って自分にとってはどういうことかな?
と一度考えてみるのもいいかもしれませんね。
自分に問うてみてください。
今日の話は自分の中にある豊かさを認識し、それを基に創造するプロセスに関するものです。
抽象彫刻を作る中で多くのことを学ぶことが出来るはずです。
「何でもあり」の自由な世界だからこそ、自分だけが納得できる作品を追い求めてみてください。
完成したとき、そこには世界に一つしかない、あなたの「心」が形になって立っているはずです。





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