Work and Photo by Senri
皆さんこんにちは。
ミロの羅針盤館長のSenriです。
今回は石の彫刻40年のキャリアを持つ私が、大理石彫刻の作り方を初心者にもわかりやすく徹底解説していきます。
この記事を読めば、
大理石とはどんな石か
大理石彫刻を作るための手順
大理石彫刻を作るために必要な道具
大理石彫刻を作るために必要な技術
その他必要なこと
を知ることが出来るので、最後までお付き合いください。
はじめに
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はじめての石の彫刻
石の彫刻を初めて作ったのは私が19歳、美大の石彫実習の時でした。
硬い石にノミ一本で挑むのは非常にハードな作業でしたが、石を彫っている時間、何とも言えない満足感を覚えたものです。
それは何十万年もかけて出来上がった天然の石が持つ清澄なエネルギーにじかに触れた感触でした。
さらに形を彫り進んでいくときに覚えた心の高揚感は忘れることが出来ません。
同じ彫刻の世界の中でも、石という素材の独自の世界と魅力が存在します。
大理石との出会い
石の彫刻の道を進むにつれて、やがて大理石という石材の魅力を知るようになりました。
美術の教科書で見ることが出来るように、大理石彫刻は人類の長い彫刻の歴史の中でも大変重要な分野でもあり、あまたの彫刻家たちが名作を残してきました。
私も大理石でたくさんの彫刻を作ってきました。
一緒に見ていきましょう。
大理石彫刻の作り方①大理石とはどんな石?
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大理石は初心者向き?
大理石は、石灰岩(サンゴや貝の遺骸等が海の底で堆積し圧力で固まってできた石)が地中でマグマの熱と圧力で再結晶した変成岩です。
粒が細かく程よい硬さで彫りやすく磨くと美しい光沢がでます。彫刻に大変適したとても美しい石です。
石の初心者が取り組みやすい石でもあります。
大理石と言えば白を思い浮かべる人も多いと思いますが大理石は驚くほど色のバリエーション豊富です。
古来より彫刻をはじめ建築材料としても使われてきました。
ミケランジェロが彫っていた美しい白い大理石、イタリアの「ビャンコカッラーラ」は有名ですね。
大理石彫刻の作り方②大理石彫刻を作るために必要な道具

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大理石を彫るための道具について一つ一つ説明しましょう。
ポイントチゼル
ポイントチゼルとは石のみの中でも粗彫りに使うのみです。
シンプルに先がとがったノミです。
大理石は御影石や玄武岩などと比べるとやわらかい石になります。
超合金のタンガロイでなくても比較的長時間作業でもノミ先の鋭さを保ちます。
ホームセンターで売っているコンクリート用のノミでも使えます。
歯のみ
ポイントチゼルで大まかな粗彫りをした後に形を整えていくときに使うのみです。
3本から4本の爪で同時に彫っていくので、面を作りやすくなります。
平のみ
形の最終段階に使うのみです。
歯のみで均した後のノミ後を取り除いて平滑な面を作ったり、鼻や目の細部を彫るときにも使います。
平のみで仕上げとすることもできます。
ヤスリ
ヤスリは磨きの前の段階で面を均す為に使います。
削る面に合わせて平ヤスリ、半丸ヤスリ、異形のヤスリ ダイヤモンドチップヤスリなどがあります。
耐水ペーパー
大理石を磨くのには耐水ペーパーを使います。
粗い番定から艶の出る細かい番定まで4~6種類使っていきます。
ハンマー
ハンマーは彫刻家にとってのみと並んでとても大切な道具です。
自分に合った重さを選ぶことが大切です。
900g~1kgのものを1本、700~800g程度のものを一本づつ持っていればいいでしょう。
大理石彫刻の作り方②大理石彫刻を作るための手順

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石を彫る手順は技法によって異なってきます。
今回は初心者にもやさしい「四面法」で彫刻を彫っていきます。
(四面法については【徹底解説】大理石彫刻の技法5選!生命ある彫刻の彫り方
https://www.milocompass.com/sculpture-carving-typeをご覧ください。)
今回は磨きの工程まで解説します。
スケッチでイメージを明確に
- まず自分が作りたい彫刻のイメージを紙にスケッチしていきましょう。人物の頭像、動物、鳥、魚、抽象形体など。影をつけて立体的に描ける人は、彫刻の完成をイメージして出来るだけ詳細に描いてみましょう。絵を描いていくうちにイメージが固まってきます。今回はできるだけシンプルな形にしていきましょう。
模型を作ろう
- 石粉粘土を用意します。スケッチに基づいて、手のひらに乗るくらいの彫刻マケットを作ってみましょう。石粉粘土は乾燥して固まった後、削って形を整えることが出来ます。
(100円ショップで買うこともできます。) - 形が出来たら完全に乾燥させます。
- 乾燥した後サンドペーパーで形を整理します。
いよいよ大理石に彫刻 まず石にデッサン そしてかまぼこ状に彫る
- まずは大理石の側面(広い面)からデッサンを描きます。模型を見ながらデッサンしましょう。その輪郭に沿って、かまぼこ状にぐるりと彫り余分な石を取り除いてしまいます。
その後ある程度、平ノミやヤスリで面を均します。(そのほうが後で楽です。) - それが終わったら正面からデッサンをして、同じ作業をします。今度は平らな面ではないので、デッサンしにくいですが、(何とか頑張ってください)模型を真正面から見た形を写し取ってください。
- 今度は天端面からデッサンをします。そして同じようにかまぼこ状に彫りこんでいってください。
面上の点を目安に丸く彫りこむ
- 最終的にカクカクした形の石が残りましたね。一度この段階で石をよく見てください。今、3方向から石を彫りだしましたが、この形が何を意味するか分かりますか?
大事なところなのでよく聞いてください。今削り取った面上に完成したときの点が存在するということです。
これからやることはこの点を道しるべに沿って彫刻を彫り進むということです。 - ⑨で説明したように面上に完成時のいくつかの点がすでに表れています。ですからその点のある場所はもう彫らなくていいということです。それ以外の出っ張ったところを、模型を見ながら丸く彫っていってみましょう。
- 歯ノミや平ノミで形を作っていきます。
やすり掛け
- 平のみの後はやすりで形を整えていきます。このころになると大体完成のイメージが見えてきます。
磨きの作業
- やすり掛けが終わったら今度はサンドペーパーで磨いていきます。サンドペーパーは80番、120番、240番、400番、1000番、2000番と進んでいきます。サンドペーパーの80番では石が削れて形が変わっていきます。
形の磨きを入れる作品の場合、最終形はこの80番、あるいは120番で固まると考えてください。2000番まで磨くと石の表面に光が照り返し、石の存在感を引き立てる艶が出てきます。マットな仕上げにする場合は400番くらいで終了する場合もあります。ちなみに私の作品では2000番で完成することが多いです。磨きが終わったら完成です。大理石はシミがつきやすいので、撥水剤を塗布しておくといいでしょう。
大理石彫刻の作り方④ 大理石彫刻を作るために必要な技術

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ここからは大理石彫刻を作るための技術のポイントについて解説していきます。
石を割る
- 今回は小さな彫刻ですので平たがねを使います。石の表面に描いた輪郭線の少し外側にタガネを垂直よりやや寝せるようにしてあて、ハンマを振り下ろします。
石を彫る
- ポイントチゼルを使って、“石の山”をはじくようにとっていきます。
山が取れたら、次の山をとっていくという要領です。うまく彫るコツは石の山の付け根にノミを当てるのではなく、付け根からやや上のところをたたくことです。そしてハンマーを振り下ろしノミに充てるとき軽くスナップを聞かせるとよく割れます。このあたりの感覚はやりながら掴んで行くといいでしょう。 - 歯のみを使うときは、ノミの先端を石に充てたまま何度もハンマでたたいていきます。石には歯ノミの跡が長い線として残ります。
- 平のみを使う時も歯のみの時と同じように、石の表面にノミを当てたままハンマでたたいていきます。
歯ノミの時もそうですがノミを当てる角度が大切です。角度が浅いと滑ってうまく彫ることが出来ません。うまく彫れる角度を探します。細かいところを彫るときは小さめのハンマを使って小刻みにたたいていきます。 -
やすり掛け
- やすり掛けは根気のいる作業です。
あまり力を入れても石が削れる量はさほど変わらないので、一番削れる力の入れ具合を確認したら、肩の力を抜いてリズムよく手を前後させていきましょう。磨きの手順
磨きの作業もやすり掛けと同じように、大変根気のいる作業となります。磨きについてはいくつかのポイントに分けて解説しましょう。
・水をつけて磨く 耐水ペーパーを使う
水をつけて磨いていきます。そのために耐水ペーパーを使います。水をつける理由はペーパーの目に詰まる粉を洗い流しながら磨けるからです。
・番定ごとにしっかり磨き切る
磨きにおいてこのポイントが一番大切です。
例えば、120番のペーパーをかけた後に240番をかけ、その次に400番をかけますが、この400番をかける時に120番の疵がまだ残っていたら、400番でこの疵を消すのは途方もなく時間がかかってしまうからです。
ですから番定ごとにしっかり磨き切るのがとても大切なのです。
・適度な力で淡々と磨く
磨きの作業もやすり掛けと同じく、余分な力を入れても削れる量は変わりません。
ですから均等な力で何回も手を動かしていく必要があります。
Senri’s Insight 「石の時間」に入る
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美大で石彫実習をしたときのことです。
石が初めての学生たちもノミで形を彫っていく作業は意気盛んにこなしていくのですが、磨きになったとたん音を上げてしまいます。
それは磨きの作業が単調なうえに、いくら手を動かしてもなかなか疵が取れないように感じてしまうからです。
そこで私は彼らに「石の時間」に入ってみようと言ってみました。
やり方は簡単です。
石の磨きたいところにペーパーを当て、前後に50回手を動かします。
その時に、イチ、ニ、サン、シ、、と50まで数えます。
それが終わったらもう一度最初からそれを繰り返します。
これを10回も繰り返せば十分磨けてしまいます。
「これで石の時間に入れるよ」と学生に言ってあげました。
皆作業に集中することが出来るようになり、見事に磨き上げることが出来ました。
人間は何か行動を起こしたら即座に結果を求めてしまう傾向にあります。
現代人は特にそのような傾向が強いかもしれませんね。
川の下流に行けば丸く磨かれた石がたくさん落ちています。
上流にあった石が川の水と一緒に流され、ほかの石に当たりながら角が取れ、だんだんと磨かれていったものです。
これが磨きの原理です。
石を磨くとは、まさに石という大自然の時間の中に身を置くことに他ならないのです。
安全対策
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石をノミで叩くときに石のかけらが飛び散り、目に入ることがあります。
石を凝視していると特に目が危険にさらされることになりますので、必ずゴーグルをするようにしてください。
100円ショップで買える花粉症を防ぐための眼鏡も便利です。
ハンマーで手を叩いたりします。
また粗い石肌に何度も手を触れることになるので手袋をしましょう。
軍手や農作業用の薄手の作業手袋などがいいでしょう。
まとめ
Photo by Senri
今回は大理石彫刻の作り方を、作業手順に沿って解説してきました。
大理石の特性
彫刻の作業の流れ
技術のポイント
安全対策など
分っていただけたのではないかと思います。
後は実際に少しづつでも実践してみてください。
質問にも答えていきますので、これを機会にぜひメンバー登録されてください。
それでは今回はこれで終わります。





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