紙を使って立体アートを作る プロの彫刻家の一味違う美術授業 


 

ミロの羅針盤館長のSenriです。

「今日は、紙一枚から“立体アート”を作りながら、『なぜそれが作品になるのか』まで体験できる授業をやります。」

この記事を読むと、

そもそも立体とは何か?

アートにおける「視覚的な比喩」とは?

作品のスケールが持つ意味とは?

といったことがわかると同時に、「なぜそれは作品になるのか」といったアートの根本の発想に目を向けることが出来るようになります。

今回は中学生に向けてライブ授業をするような感覚進めていきます。

美大生が聞いたって発見があると思いますよ。

ぜひ最後までお付き合いください。

【用意するもの】 画用紙/鉛筆/絵の具(重ね塗りのきくアクリルがおすすめ)/竹楊枝/土台の板 

【流れ】①線を引いてハサミで切り抜く → ②台座に立てて回す → ③折って光を入れる → ④色で意味を変える

紙を使って立体の作品を作る① 平面と立体へのジャンプ

「はーい、今日は立体の授業をやるよー。」

「用意するものは画用紙、鉛筆、絵の具、それと竹楊枝だね。それから土台になる板切れも一つ。」

まずは紙の上に線を引いてみよう

「じゃあ、まずは画用紙に自由に線を書いてみて。ただし、条件があります。」

①線は交差してはいけません。

②そして線を描きだしたポイントと、線が終わるポイントが一致することです。

「意味わかるかな?」

「オッケーですね。じゃあやってみて。」

「おー、雲みたいな形になったね。」

「自由に描くって言うと、雲を思い出す人は多いかもね。だって、雲は自由に形を変えていくものの象徴だから。」

画用紙に線を描く

「さあ、これは紙に描いた絵だから平面だよね。じゃあ突然だけど、この平面を「立体」にするにはどうしたらいいかな?ちょっと考えてみよう。」

ハサミで線に沿って切り取る

「わからないかな?よし、じゃあこうやって線に沿って画用紙を鋏で切ってみると、、、」

「ほら、これで立体ができたよ。」

線に沿ってはさみで切り取る
いらない線は消しゴムで消しておこう

「おや、キツネにつままれたような顔をしてるね。」

「そうそう、理屈はわかるよね。」

一枚の紙も立体?

この画用紙にだってほんの少しだけど、厚みがあるからね。これは立派な立体です。」

「そんなこと分ってる? まあそう言わないで。これは結構大事なことなんです。」

ここでストップ!

画用紙をハサミで切り抜いたから立体になった?

もし切り抜かなかったら? それは絵のままなの?

ちょっと考えてみよう。

立体を感じるには意識的な目が必要?

「じゃあ、これに竹楊枝をつけて台座に刺してみよう。ほら、雲が空間に立ち上がったぞ。」

竹楊枝をテープで留めて、木の台座に差し込む

注意深く見てみよう

「ゆっくりと回してみよう。よーく見てみてね。」

「ここはちょっと注意が必要なところだ。画用紙の輪郭線がゆっくりと形を変えていくのがわかるかな? デッサンをよくしている人はこういうのが見えるはずだよ。デッサンというのは「見る強い意思」が必要だろう?」

ゆっくり回しながら眺めてみる
形が変化していくことに注目!
上のほうからも見てみよう

「どうだい、平らな紙のはずなのに雲がゆっくり形を変えていくように見えるじゃないか。ちょっとすごいよね。」

紙を使って立体作品を作る② 人間の知覚と視覚的な比喩の力

「今度はこの画用紙を折り曲げて、屏風みたいな格好にしてみよう。」

「はい、雲に陽の光が差しました。」

「ね、そんな風に見えないかな?」

「実は人間は、普段はこれくらいに整理して物事を知覚しているかもしれないよ。」

画用紙を屏風のように折り曲げてみる

視覚的な比喩表現について

「この辺からちょっと難しいけど、視覚的な比喩表現ということも視野に入っていきます。」

「もう少しやってみよう。また同じように雲の形を切り抜いて、それを半分に切って、それらをテープを使って垂直方向に交差するように組み立ててみよう。」

垂直方向に張り付ける紙のパーツを作る
ハサミで切り離す
テープで張り付けよう。パーツが垂れないように下の面に画用紙をL字に曲げて糊で張って補強してもいい。
楊枝をつけて台座に固定する。

「より複雑な形になった。これはどう見ても立派な立体でしょう!」

視覚的な比喩とは?

「じゃあね。さっきの比喩の実験をしよう。」

今作った立体物に色を付けるとしたら、君はどんな色を付ける?

「ピンク色? それはどうしてなのかな?」

空に浮かぶ甘い綿菓子

「あー、綿菓子(わたがし)かー。なるほどね。雲が綿菓子になった訳だ。空に浮かぶ甘い綿菓子。」

「そう、そう、それがあなたの連想したもの。他の人なら違うことを考えたはずだよ。」

「雲は自由、綿菓子は甘い。そこに自分の中でどんな関係があるのか意識の上ではちょっとつながらないかもしれない。だから言葉にはならないし、「何だかわからないけど、そこにはやっぱり何か繋がりがありそう」、とイメージの境界線を広げてくれるのが比喩の力なんです。」

絵の具で色を付けてみよう(ここでは重ね塗りのきくアクリル絵の具を使用。)
着彩終了 もう少しムラがないように塗るのがいいね。
いろんな角度から見てみよう。

色の違いで作品の意味が変わる?

「では今度は、僕の方から提案します。この立体物を真っ赤に塗ったら、何を連想しますか?」

「おお、地獄の雲ね。地獄の紅蓮の炎に染まった雲というわけだね。」

「じゃあ、一度「雲」から離れてみたら、どうなりそう?」

「なるほど金魚か。よろしい。イメージの飛躍が起こったぞ。楊枝をつけてまた回してみようか。綺麗だねー。ああ、君もそう思う?本当に複雑な、形が千変万化するようだね。」

赤色を塗ってみた。

スケール(大きさ)が持つ意味

「これ大きくしたら面白そう?」

そう、そうなんだよ。3メートルくらいにしたらどうかな。」

「絶対いい? 駅前とかにありそう?」

駅前にあるオブジェ?

「そうだよね。君はとても重要なことに気づいたんだよ。それはスケール(大きさ)が持つ意味があるということ。大きさというのは大切な要素なのです。当然だよね。見る人がどう感じるかということが大事なんだからね。」

「駅前のビルに囲まれた空間に、真っ赤な雲のような、金魚のような、大きな立体物を見上げるように設置されていたら、道行く人たちはどんな気分になるだろうね。」

「もちろんピンク(綿菓子)でも面白いと思ううよ。」

素材の違いで彫刻の意味が変わる?

「じゃあ、もしこれがピカピカのステンレス板でできていたら?周りのビルや空が写りこんで、まったく違った意味合いになるよね。選ぶ素材によってもその立体物、つまり彫刻作品の持つ意味合いが変わってくるんです。

「いつの間にかこんな時間になってしまったな。続きはまたね。今日の授業はこれでおしまい。」

抽象彫刻のアイデアの出し方 ~巨匠に学ぶ形を作る6つのアプローチ

紙を使って立体作品を作る 知ることは感じること まとめ

Senri 御影石作品

今日は身近な素材を使ってを使って立体について考えてみました。

もちろん、今日のワークショップは立体というものの深い世界の一側面を説明しているにすぎません。

それでも皆さんが、立体ということについて何かを知ることにつながれば嬉しいです。

ここでの一番のポイントは、やはり私がほかの記事でもお話ししているように、「感じるということ。」

知るということは感じることなのです。

「これって何だろう?どうしてこう見えるんだろう?」という「問いそのもの」がすでに皆さんの世界のとらえ方を変化させています。

今日の授業を思い出しながら、街をぶらぶら歩いてみてください。

そして感じてみてください。

何かのアイデアがゆっくり浮かんでくるかもしれませんよ。

Senri 大理石とステンレスの作品
Senri作 竹の集合材による作品