ミロの羅針盤館長のSenri です。
私は石や木を彫って彫刻を作る傍ら、平面作品も手がけています。
その中でも、鉛筆だけを使って描くスケッチが大好きで、折あるごとに描いています。
旅行に行ったときは、カメラよりもスケッチブックや画用紙、そして鉛筆を手に、軽くスケッチしたりすることが多いです。
そういうわけで、今日は私なりの鉛筆画の描き方をご紹介したいと思います。
結論から言うとBか2Bの鉛筆一本あれば、線と濃淡だけで風景は描けますよ。
この記事を読めば、
鉛筆画の魅力
鉛筆の使い方
構図の見つけ方
鉛筆の線やグラデーションを使う描き方
が分かりますので、最後までお付き合いください。
鉛筆画の描き方 モノトーンによる風景画の魅力

鉛筆画の魅力を一言で伝えるとするなら、テレビを視ることとラジオを聴くことの違いに例えられるのではないでしょうか。
このように聞くと鉛筆画はどちらのほうだと思いますか?
この例えの意図は大体わかっていただけたかと思うのですが、ラジオのほうは声だけですから、映像と声が一緒に伝えられるテレビに比べると、情報が少ないですよね。
鉛筆画 限られた情報の中に想像力を働かせるモノクロの魅力

でもラジオを聴いていると、いろんな想像力が膨らんだりします。「テレビよりもラジオのほうが好き」、という人は多いのではないでしょうか。
鉛筆画も、黒一色の非常に限られた色相の中に、シルエットや線、そしてグラデーションといった要素でものごとを再現していきます。
その限られた情報に対して、人間は何かしら感情を伴った想像力を喚起することが出来るのです。
鉛筆画の風景には特別な魅力があります。
鉛筆画の道具/鉛筆の種類・削り方・紙の選び方
さて、大事な道具である鉛筆について見ていきましょう。
鉛筆の種類と濃さ(H・B)の使い分け
鉛筆には10Hという非常に薄くて硬い芯を持ったものから10Bといった大変濃くて柔らかい芯のものまであります。
これらの鉛筆を使い分けることで、豊かなグラデーションを作り出すことが出来ます。
Senri’の場合
私がよく使うのはBと2Bです。
基本的にBの鉛筆が一本あると、筆圧の強弱によって、大変明るいトーンから明度が極めて低い真っ黒のトーンまで描くことが出来ます。
2Bは絵を描き進めていくときに、筆圧による明度の調整の具合が、私にとって一番心地よい鉛筆なのでよく使っています。
鉛筆の削り方 鉛筆削り機は使わない
鉛筆はカッターナイフや肥後守などの小刀で削ります。
鉛筆削り機で削らないのにはちゃんと理由があります。
小刀などで、芯を5~10mmほどそのままむき出すように削ります。
それは芯の腹部を使って描けるようにするためです。それによって、幅広く黒鉛を乗せることが出来、グラデーションの表現の幅を広げることが出来ます。
鉛筆画 紙の選び方について
鉛筆画を描くための紙にはどんなものがあるでしょう。
代表的なものでは画用紙があげられます。
画用紙には細目、中目、粗目といった表面加工の違いがあります。それによって出来上がる鉛筆画の風合いが変わったりします。
今回の実践編では、一般的な中目くらいの画用紙を使っていきます。
消しゴムと練り消しゴムを使い分ける
大きく消すときは消しゴムで
鉛筆画を描いていると、必ず修正したりすることが出てきます。その時に必要なのが消しゴムです。
私が中学生の時の美術の先生は、「消しゴムを使うな」、とよく言ったものですが、それは間違を恐れて気持ちが萎縮してしまわないように生徒を指導するためだったと思います。
実際これは絵を描くうえで、とても大切な心構えです。気持ちが萎縮すると生き生きとした絵が描けないんですね。
そのようなことを踏まえたうえで、消しゴムを活用しましょう。自分が目指す絵を描いていくうちに何度も線を引いていくことになりますが、納得のいかない線は消しながら進めるといいでしょう。そのようなときには消しゴムを使います。
練り消しゴムでハイライトを描く
練り消しゴムは普段あまり目にしないものですが、鉛筆画ではとても役に立つ道具です。
練り消しゴムは、消しゴムのようにごしごし擦るのではなく、軽く押し当てて使います。それによって少しずつ鉛筆の黒鉛が取れていきますので、トーンの調子を整えたり、仕上げのハイライトを入れることが出来ます。
練り消しゴムは、自由に形を変えることが出来るので、先を細くして、筆のように使うことが出来ます。
鉛筆画の描き方 風景の中の何処を描くのか?

さあ、今日は実際に風景画を描いていきます。
風景を描くときに最初に決めること
そもそもですけど、風景画を描くときに最初に決めなくてはいけないのが“何処″を描くかということですね。
旅行などに行くと、見るものが新鮮で、どこを見ても絵になりそうな気がしてきます。
しかしありふれた日常の中にも、素敵な風景がたくさんあるものです。
でも風景の中にそういう面白さや美しさを見つけるにはどうしたらいいのでしょうか?
そういう絵になりそうな風景を見つけたい時に、ポイントになるのが構図というものです。
構図とは何か? 四角い枠で区切ることで生まれる世界

構図を決めるとは、四角い画用紙の中に、風景のどの部分を描くかを決める、あるいは四角い画面に合わせてどのように切り取るかを決めることです。
少し難しい言い方になりますが、絵というものは、人間が物事の中にどのような美を見出すのか、どのように感じるのか、といったことを体験するための方法です。
無限に広がる風景を、むしろ四角い限られた枠で区切ることによって、その中にある要素を豊かに楽しむことが出来るようになります。
構図の具体的なとり方
親指と人差し指で枠を作って眺めてみよう
構図を決めるときに、両手の人差し指と親指を使って四角い枠を作って、景色を眺めてみてください。
そうすると指の中に何らかの構図が生まれるのが分かります。それを眺めながら手を動かして、”自分が描いてみたい”と思うものを探してみてください。

四角い画面の中にリズムを作ってみよう
あえて提案するならば、構図を決めるときは、四角い画用紙の中に風景の中の要素を使って、どのようなリズムを作り出すか、ということを念頭に置いているといいでしょう。

建物や電線が作り出すリズムを意識しています。

真ん中に大きな楠を入れた構図。ちょっと大胆でしょう?

画面全体でリズムをとります。描写はずいぶん簡略化しています。

この鉛筆画の構図は私がよく使うスタイルです。描いたところだけでリズムをとり、周りに空白を残します。



絵画の歴史の中で理想的な構図のとり方は研究されてきました。いわゆる「黄金分割」や「三分割法」といったものがそれです。
豆知識 黄金分割とは?
線分や長方形において、全体に対する長い部分の比が、長い部分に対する短い部分の比と等しくなるような分割比率(黄金比)のことです。
構図に活用すると一番美しいと言われているものですので、こういったものを、学んでみるのもよいと思います。
鉛筆画の描き方 風景を“リアル”に描くために知っておきたいこと
美しい風景などを目の当たりにすると「目の前の風景をリアルに描きたい、自分が感じている情景を正確に残したい」と思ったりしますよね。
あえて全部は描かない
ここで知っておきたいことは、
絵によって再現されたものが、実際に見えているものに対して「リアル」だと感じるためには、実はすべての要素を描かなくても大丈夫、ということです。
人間の目は、近くにあるものと、遠くにあるものの大きさのバランスを正確にとらえるだけでも、その状態の本質を認識します。
遠近法について(近景・中景・遠景)
近景・中景・遠景
近くにあるものが大きく見えて、遠くにあるものが小さく見えることを利用して、画法として確立させたものが「遠近法」です。
遠近法では大きく分けて「近景」「中景」「遠景」として風景をとらえる考えが示されています。
空気遠近法
また遠くにあるものがかすんで見えることを、絵画に応用したのが空気遠近法です。
一般に風景画においては、近景を強く大きく描き、遠景にあるものを小さく弱く描くというセオリーがあります。
Senri’sEye
遠近法はルネッサンス期に完成された絵画の描画法であり理論です。
今回は、これらの知識も参考にしながら、風景を実際に見て、また寸法を測ったりしながら物の見え方を学んでいきましょう。
関係性をとらえることでリアルになる
Senri流リアルに描くコツ
以下のこと気を付けていけばリアルな風景画が描けます。
大まかにでもいいから物事の関係性をとらえてみましょう。
こことあそこの線の長さはこれくらい違う。
この点はこの点の2倍の高さのところにある。
この線は垂直に対してこれくらい傾いている。
部分Aと、部分BではBのほうが暗い。
部分Bと部分CではCのほうが暗い
など
寸法を測ってみよう
ここでぜひやってみてもらいたいのが、寸法を測るということです。
手に持っている鉛筆を使って簡単に図ることが出来ます。
寸法を測ることによって、物と物の関係を正確にとらえることが出来るようになります。
後で実践の中で鉛筆を使った寸法の図り方をお伝えします。
鉛筆の使い方について

鉛筆には様々な使い方がありますが、ここではいくつか解説してみましょう。
鉛筆でさまざまな線を引く
鉛筆は線を引くことが出来ます。線にもいろいろな線があります。
細くて鋭い線、太くて柔らかい線、太くて強い線、細くて薄い線など。
これらの線は鉛筆を紙に押し付ける力の入れ具合で調整します。または先端を細く削ったり、鈍く丸まった形のままにしたり、といったことで様々な変化を持たせることが出来ます。
この線を使って輪郭線を描いたり、形を暗示したりすることが出来ます。
鉛筆の腹を使って、やわらかいグラデーションを作ることもできます。
そして鉛筆は何度も塗り重ねることもできます。
画用紙の表面の凹凸を利用して、質感を出したり、絵としての雰囲気を出すことが出来ます。
鉛筆画の大きな魅力は、このように鉛筆一本で大変複雑な表現が可能であるということですね。
グラデーションは何を表している?
さて、上記で触れたグラデーションについてもう少し詳しくお話しします。
グラデーションは形に対する光の当たり方
写実的な絵におけるグラデーションとは、ものに対する光の当たり方を表すものです。
つまり、グラデーションはものの形を表しているということが出来ます。
ですから、明るいトーンから暗いトーンを鉛筆で作り出すことで、ものの形を描写しているわけですね。
固有色について
モノトーンの絵を描くとき、もう一つ押さえておきたいことがあります。
ものには「固有色」というものがあります。
例えば白鳥は白いですが、カラスは黒いですね。
トマトとレモンでは、鉛筆で描くとどちらが暗いトーンになりそうですか?
モノクロである鉛筆画においては、個々の固有色も鉛筆一本で表すことになります。
風景のスケッチを描く場合でも、このことを頭に入れておいてください。
鉛筆画(風景スケッチ)を実際に描き始めましょう
今回は、風景画でポイントとなる近景・中景・遠景について学べるように、近くのものと遠くのものの大きさの違いが分かりやすい”通り沿いの街並み”をモチーフに選びました。
鉛筆を使って寸法をとろう
まずは画用紙に薄い線で大まかに下描きをします。(位置取り)
下書きをするときに鉛筆を使って寸法を測りましょう。
鉛筆を持つ手は肘をしっかり伸ばします。こうすることによって計測のずれをなくすことが出来ます。
この場面では、左側にある家が、画面の中でどれくらいの高さまでくるのかを確認します。
左の家の屋根の頂点の位置と、右にある門の屋根の鬼瓦の位置が画面の中でどれくらいの関係になっているかを見ます。
近くにあるものは絵にすると、思った以上に大きいことが分かります。
右にある門をしっかり画面に入れたいと思ったら、左にある家はずいぶん小さくしないといけないことが分かりますね。
実物と同じように画面の中でも寸法をとりながら位置を決めていきます。
ここでは門瓦の端が、石積みの壁のどのあたりに来るのかを視ています。
更に多くのポイントでそれらの関係性を視ていきます。だんだんと位置関係をはっきりさせていきます。
(遠くにあるものが、画面の中でどれくらい小さくなっているかに注意!)
線とグラデーションを使って形を描いていく
ある程度下描きが出来たら細部を描いていきます。
いつもものの関係性を視ていきましょう。
(屋根の傾きは水平線に対してどんな傾き具合か?)
Senri’sEye
あまり神経質になる必要はないですよ。
逆に言うと大まかな関係性が決まると、細かいところはあまりこだわらなくてよくなります。
鉛筆の腹を使ってトーンを加えていきます。(グラデーションを作っていく)
目の前の景色を見ながら「こちらとあちらではどちらが暗い?」と気を配っていきます。
同じように描き進めていきます。
全体のバランスがとれるところまで描き進めたら、もう一度全体を見直して、さらに筆を入れていきます。
完成
制作後の感想
約2時間ほどの制作でした。島原市の城下町には江戸時代の石垣が数多く残っています。
道の向こうにはお城の櫓が小さく見えています。歩道に簡易チェアーを置いて、麦わら帽子で日よけをしながら描きました。
仕事を始めたのが午後3時半くらいだったのですが、5時を過ぎると通勤の車や人通りが多くなって、少し邪魔になったかとも思いますが、ありがたいことに皆さん親切でした。
完成した絵を見てみると、全体的に絵がやや左のほうに寄ってしまったかな、とも思いましたが、まあ、これで良しとしましょう。
鉛筆画を描くことはものが見えるようになるための練習(おわりに)
私たちは、普段どれくらい周りの風景や、身の回りの物を見ているでしょうか。
実は、意識的にはほとんど何も見ていない、と言ってもいいくらいなのです。
何か対象を見て描く行為は、ものをよく見ることであり、また見えるようになるための練習でもあります。
描くことが見ることを助ける
絵を描くことの素晴しさは、手を動かして描くという行為が、見ることを助けることなのです。
モノがよく見えるようになってくると、普段の生活の中でも、いろいろなものを見て、感動することが多くなっていきます。
何気ないものの中に美を発見する目が育っていきます。
まずは、ぜひその手に鉛筆を握ってみることから始めてみてください。
日常のペースから一歩立ち止ってみるだけで、ものの見え方は大きく変わるものですから。
この記事が、皆さんが楽しく鉛筆画を描くための羅針盤になることを祈っています。











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