石膏型取りのやり方を彫刻家が解説 小型粘土原型・レリーフと丸物

皆さんこんにちは。 ミロの羅針盤・館長のSenriです。

今日は、石膏型取りについて解説していきます。

石膏型取りは、粘土などで作った作品を、耐久性のある石膏に移し替える技法のことです。

私にとっては、石の彫刻のためのマケット(模型)を作るときによく使う方法です。

今回は小型作品の、石膏型取りのやり方を解説していきましょう。

今回の記事を読めば、

石膏とは何か

レリーフの型取りの方法

立体彫刻(丸物)の型取りの方法

 

が分かりますのでどうぞ最後までお付き合いください。

石膏型取り 石膏とは何か

Senriのアトリエ
主に石彫制作のための石膏模型が並んでいます。

石膏は古くは古代エジプトやメソポタミアで彫刻や道路舗装などの素材として使われていました。その後、ペルシア、ギリシア時代へと受け継がれ、ルネッサンス期には古代彫刻の複製を作るのに広く普及しました。彫刻制作における石膏の歴史はとても長い訳ですね。

石膏の主成分は硫酸カルシウムです。粉末(焼石膏)を水と混ぜることによって化学反応を起こし、「針状結晶」となり硬い塊へと硬化します。

硬化した石膏は、ソープストーンなどの軟石ほどの硬さで、強度がありながらサンドペーパーなどの加工が容易です。

 

石膏型取りで必要な道具や材料

石膏かたどりのための道具類

焼き石膏
ホームセンターに行くと1kgか2kgに小分けした袋入りのものが購入できます。

ステンレスボウル

アルミ缶

ヘラ
食事用のスプーンを平らに伸ばしたものを使います

カリ石鹸 
キッチン洗剤でも代用できます。

筆 刷毛
豚毛などの硬い毛足の筆が適しています。

切り出しナイフ

耐水ペーパー

石膏型取りのやり方① レリーフ

さあこれから実際にやり方を解説していきます。

レリーフ原型制作

今回は油粘土で制作したレリーフを石膏で型取りしてみましょう。

油粘土は水粘土と比べて乾燥の心配がなく、何回も成形したり壊したりできるので、原形づくりには便利です。

油粘土のレリーフ原型

レリーフをプラスチック板やベニヤ板(ベニヤ版には離型剤を塗布しておきます。)などの上に置きます。

外型の作成

石膏を水に溶いて液状にする (水と石膏の比率は1:1)

ステンレスなどのボールに水を張ります。

 

そこへ石膏をダマにならないように、さらさらと落としていきます。

底にたまった石膏の粉がだんだん表面まで上がってきます。
表面に石膏の粉が出てきたらOKです。この状態が石膏と水が1:1の状態です。

泡をたてないようにかき混ぜます。液状の石膏が出来ます。

泡をたてないコツ
ヘラの先を石膏液の中から出さないようにして混ぜます。もしくはヘラの先をステンレスボールから離さないように、ゆっくり8の字に動かすようにすると泡がたちにくくなります。

均等の厚さで石膏を塗る

2分から3分待って、ややペースト状になったところで(もう硬化が始まっています。)ヘラで掬って、粘土の原型に塗布していきます。

全体に5~7mm程度均等に厚みをつけていきます。(原型が大きくなるにつれて、厚みを増やします。)全体に厚みを付けたら終了。約40分待ちます。

石膏が完全に硬化します。これで外型が完成しました。

型を乗せている板を軽くハンマーでたたくと外れます。

外型から粘土を取り出します。

 

離型剤(カリ石鹸)を塗る

このまま約30分~1時間ほど石膏を乾燥させます。(離型剤が染み込みやすくするため)

カリ石鹸と水を1:1で配合します。
(美術大学ではどんぶり一杯の水に対して親指位の量、と習いましたが、私は大体この配合です。自分のやりやすい量を探すといいでしょう。)

刷毛を使って離型剤(カリ石鹸)を塗ります。
離型剤が石膏にしみ込んで、表面に水分が見えない状態まで待ちます。

次に外側から水をかけます。あるいは濡らしたティッシュなどを当てます。外型がまだ水分を吸収する状態のままだと、石膏を流し込んだとき外型に液体石膏が吸収されて、分離しづらくなります。

Senriの失敗談
この工程が十分でなかったことによって、身の毛もよだつような失敗をしたことが何度もありました。外型がスムースに分離せず、せっかく作った形のデイテールがすべてダメになってしまいました。

石膏の流し込み

外型が十分に湿っていることを確認して、石膏を水に溶き始めます。
液状の石膏を外型に流し込みます。

約1時間待ちます。流し込んだ石膏が十分に固まったことを確認します。

更に泡を抜くための工夫
石膏は混ぜ合わせるときに注意をしても、少しは気泡が入るものです。
あるいは石膏を流し込んだとき、型の内側に気泡が付着する場合があります。
このような気泡は中の作品を割り出したときに、多数の細かい穴(鬆・す)として残ります。
これをできるだけ改善するために、石膏を流し込んだら、型を乗せている作業台を、金づちなどで、軽くトントンと叩いてあげましょう。
気泡があれば浮かび上がってきます。

Senriの失敗談
私も作業を急いでいると、よく石膏に気泡が入ったまま固まってしまうことがあります。
そうなると後で修正ということになって、結局は時間をとられることになります。
やはりで混ぜ合わせの時も丁寧に作業をして、質のいい石膏を作ることが大切ですね。

 

割り出し

ノミとハンマーなどで割り出しの作業をします。

気泡や欠けなどを水に溶いた石膏で埋めます。(小さめのヘラがあると便利です)

耐水ペーパーで仕上げる

サンドペーパーで仕上げたい場合は、耐水ペーパーを使うと、作業がしやすくきれいに仕上がります。

ボールに水を用意し、レリーフを十分に湿らせてから、耐水ペーパーをかけていきます。

形を整えたいときは240番くらいから始めて、最後に400番か800番をかけると美しく仕上がります。

 

ちょっと工夫

大きなポリバケツに水を張っておきます。
この水は石膏を溶くためと、ボールに残った石膏を洗うための両方に使うようにします。
ボールに残った石膏を洗うと、水は白濁しますが、しばらくすると、底のほうに沈殿していきます。上澄みを使ってまた石膏を作ります。

 

石膏型取りのやり方② 立体作品(丸物)

今度は立体作品の型取りをしていきます。

レリーフと違って背面が開かれた状態になっていないので、粘土が取り出しにくい状態です。

割り型を作る(外型)

切金を使う

この問題を解決するために「切金」を使って割り型を作ります。

「切金」を使って外型を分割し、粘土を取り出しやすくします。

アルミ缶で代用

専門店には薄い真鍮製のシートが売ってありますが、アルミ缶を開いて使うこともできます。

ここではアルミ缶を使っていきましょう。

アルミ缶をハサミで幅1㎝ほどの幅のテープ状に切っていきます。

それを今度は、図のように角度をつけながら切っていきます。原型の局面に対応するためです。
これで切金の完成です。

切金を差し込む

粘土原型に切金を差し込んでいきます。

このように少しだけ角度をつけてあげると、外型を再度合わせるときにズレを防ぐことが出来ます。

切金に沿って石膏を塗る

切金を入れたら石膏を塗布していきます。この際、切金があまり石膏に埋まらないようにしましょう。この大きさであれば、厚みは5mmから7mmにしていきます。
慣れないうちはなかなか均一にならない場合があります。時折へらを垂直に当てて厚みを確認してください。

全体に石膏を塗ったら硬化するのを待ちます。

型の分割

硬化したら切り出しナイフを使って、切金の断面が見えるように、削り出していきます。

次に切金に沿って切り出しナイフを差し込みます。(少し硬いです。)
差し込んだナイフを少し捩るようにして、外型を開きます。

ねんどを取り出す

外型が分割出来たら、中から粘土を取り出します。

離型剤の塗布

レリーフと同じ要領で離型剤を塗ります。(離型剤を塗る前に少し乾燥させましょう。)
外型の合わせ面にも塗布します。

合わせ目の目詰めをする

離型剤を塗り、塗布面の水分が引いたら、外型を合わせます。
少しだけ石膏を溶き、接合面に塗っていきます。
これによって流し込んだ石膏が接合面から漏れるのを防ぎます。

石膏の流し込みと割り出し

接合面の石膏が硬化したら、外型を湿らせます。(型の内側には直接水が当たらないように。)水をかけてもそれ以上吸い込まなくなったらOK. レリーフの時と要領は同じ。

外型に石膏を流します。

割り出しをする

1時間ほどたって硬化したらノミとハンマーで外型を割って取り出します。接合面にのみを当てると割りやすいでしょう。
力を入れすぎると、中の作品まで割れてしまうことがあるので気をつけましょう。

 

割り出し風景 写真にハンマーが写っていなくてすみません。

割り出しのコツ
最初型の接合面に鏨を当てると言いましたが、その後も外型の割れた面の中央あたりに鏨を当てて少しづつ振動を与えるようにします。
すると外型と作品の間に小さな隙間が出来てきます。
それを確認しながら外型を取り外すようにしていきましょう。
鏨が中の作品に直接当たらないようにしましょう。

形が複雑な場合も
今回は、シンプルな形なので、割り出しもスムースに行えました。
原型がもっと複雑な場合、割り出し作業が難しくなることもあります。
こういったものも注意点を踏まえながら、丁寧に作業をすれば割り出しをすることが出来ます。

作品の主題にもかかわることなので一概には言えませんが、型抜きを前提とした作品作りの場合、型同士が分離しやすい工夫を原型制作の時にしておくことはひとつの考え方です。

耐水ペーパーで仕上げる

耐水ペーパーでバリをとっていきます。粘土の質感を残したい場合は、バリをとるだけです。
私の場合は、ペーパーで仕上げ面を作ることが多いですね。

ここでは最後までペーパーで仕上げてみましょう。

要領はレリーフの時と同じです。

水を使って磨いていきます。

完成です。

 

ちょっとした工夫

流し込みの都度余る石膏は、台座などのために再利用します。型を用意しておいてその都度中に流しこむと石膏を無駄にせずに済みますよ。

石膏型取りのやり方  まとめ

今回は石膏の型取りについて解説しました。

小さな作品を使って、型取りの基本的な知識を、お伝え出来たかと思います。

(人物像や、もっと大きい作品などになってくると、工程はやや複雑になってきます。)

自由に粘土で作った作品を、永続的に残すことが出来る石膏型取り。

マットな白の質感も大変素敵ですし、アクリル絵の具などで着色して楽しむこともできます。

石膏の着色についてもまたいつか記事を書いていきますね。

石膏型取りには、作品の複製をいくつも作ることを可能にする、”抜け勾配に配慮した「割り型」”の技法や、外型をシリコンで作成する「シリコン型」などもあります。

これらの技法についてもまた別記事を書いていこうと思いますので楽しみにしていてください。

今回も最後までお付き合いくださり大変ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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